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精密むし歯治療

生活歯髄療法(VPT:Vital Pulp Therapy)
生活歯髄療法(VPT)は、歯の神経(歯髄:dental pulp)をできるだけ残す治療法です。
むし歯が深くまで進行した場合や、歯が欠けて歯髄が露出してしまった場合には、従来は神経を取る治療(抜髄)が一般的に行われてきました。
しかし、近年では新しい材料(バイオマテリアル)の登場やマイクロスコープの応用により、従来では残せないと思われていた歯髄であっても高い成功率※( 1~2年後で85~100%)で歯髄を残して治療することが可能となりました。※(AAE Position Statement on Vital Pulp Therapy, 2021)
なぜ、歯髄を残すことが大切なのでしょうか?それは、歯髄が、歯を健康に保つ上でとても重要な役割を担っているからです。
歯髄は、神経の他に血管、リンパ管を含んでおり、歯に酸素や栄養を送る働き(栄養供給機能)、外部からの細菌の侵入を防いだり(防御機能)、侵入してきた細菌から歯を守る働き(免疫機能)、痛みやしみる感覚によって歯の異常を伝えてくれる働き(感覚機能)を持っています。
また、歯の内側を構成する象牙質を新たにつくり出し、刺激から歯を守ってくれる働き(修復機能)もあります。
これらの大切な働きを持つ歯髄を残すことで、より長く自分の歯で食事を楽しむことができるようになるのです。
メリット
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01
歯を長持ちさせることができる
歯髄は、歯に栄養を送り込むとともに歯の免疫作用を担っているため、歯髄を残すことで、健康な状態を保つことができます。特に、歯髄には歯の根を形づくる役割がありますので、生えたばかりで根が成長途中の場合、歯の根をしっかり成長させ、丈夫な歯を作ることができます。
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02
歯の異常を伝えることができる
むし歯が進んでいたり、歯が欠けてしまった場合など、歯に異常が現れた場合、歯髄がしみる感覚や痛みを伝えることによって、そのことを知ることができます。もし、感覚を感じなければ、歯の病気がどんどん進んでしまい、気付いた時には手遅れになってしまう可能性があります。
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03
歯を失うリスクを減らすことができる
神経を抜いてしまうと、構造的に歯がもろくなってしまうため、歯が割れやすくなります。また、歯の感覚が鈍くなることで、噛む力が調節できなくなり、結果的に歯の寿命が短くなってしまう可能性があることが研究で示されています。(Dong et al., 1985; Virtanen, Houpaniemi, N.rhi, Pertovaara, & Wallgren, 1987; Fried et al., 2011; KC Su et al., 2014; MR Byers, 2019)
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04
治療費用や治療回数を抑えられる
歯の神経を残すことで、神経を抜く治療や、土台を立てる治療などが不要になるため、総合的な治療費は、神経を抜く治療よりも安く済む場合があります。
なにより、治療期間や治療回数を短縮できるため、通院や治療の負担も軽減されます。
デメリット
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01
歯髄が石灰化する可能性がある
VPTが行われた歯の歯髄は石灰化を起こす(歯髄が狭くなる)可能性があり、その確率は10.2%(G Bogen et al., 2008)や、0〜45%(A Boontankun et al., 2023)などの報告があります。
歯髄の石灰化の程度が高くなると歯内療法を行う場合に障害となる場合があります。 -
02
治療が奏効しないことがある
生活歯髄療法はマイクロスコープを使用し、慎重を期して行いますが、それでも歯髄が衰弱している場合や炎症が強い場合には治療が奏効せず、抜髄に至ってしまうことがあります。
そのため、当院では治療後30日以内で抜髄処置が必要になった場合、治療費用の一部を返金する保証をつけております。
当院の生活歯髄療法の特徴

マイクロスコープを使用した精密治療
生活歯髄療法は、非常に繊細な操作を要求される治療です。この治療には、マイクロスコープ(手術用実体顕微鏡)が必須です。
マイクロスコープは、肉眼では見えない小さなむし歯や、歯の中の細かな部分を拡大して見せてくれるので、歯科医師は、歯の中をしっかりと確認しながら、丁寧に治療を進めることができます。
生活歯髄療法(VPT)は、以下の4つの手法に分けられます
①間接覆髄法(Indirect pulp capping)
②直接覆髄法(Direct pulp capping)
③部分断髄法(Partial pulpotomy)
④完全断髄法(Complete pulpotomy)

間接覆髄法(Indirect pulp capping)
間接覆髄法は、深い虫歯あるいは歯の破折などにより、歯髄に近い部位まで欠損が進んでしまった場合に行われます。歯髄の保護を目的に薬剤(図の青色部分)を置き、その上を詰め物で充塡します。

直接覆髄法(Direct pulp capping)
直接覆髄法は、歯髄の表面が露出してしまった場合に行われる方法です。
薬剤で歯髄をカバーし、詰め物で充塡を行います。

部分断髄法(Partial pulpotomy)
部分断髄法は、部分的に歯髄が炎症を起こしてしまっている場合に、炎症部分を取り除く治療です。
部分的に取り除いた後の歯髄を薬剤でカバーし、詰め物で充塡を行います。

完全断髄法(Complete pulpotomy)
完全断髄法は、炎症を起こしている歯髄の範囲が広い場合に、歯冠部分の歯髄をすべて取り除く治療です。
残った歯根部分の歯髄を薬剤でカバーし、詰め物で充塡を行います。