REGENERATION
歯髄再生療法
歯髄再生の目的

歯髄を抜く「抜髄」という処置を行うと、歯髄の働きがすべてなくなります。歯全体に酸素や栄養が行き届かなくなり、歯が黄色や茶色などに変色しやすく、お口元の見た目が悪くなります。また、歯そのものがもろくなり、欠けたり割れたりなど、歯の寿命が短くなる恐れもあるのです。歯と被せ物のわずかな隙間から細菌が侵入し、中でむし歯が起きても神経がないため痛みを感じず、根の下に膿が溜まるほど悪化するケースもあります。
これらの問題を解決するのが「歯髄再生治療」です。培養した歯髄幹細胞を抜髄した歯の内部に移植すると歯髄が再生し、以前と同じように「健康な歯」を取り戻すことができます。歯の寿命も延び、二次むし歯の予防やご自身の歯で食事を楽しめるなど、さまざまな健康効果につながります。
歯髄再生療法のメリット
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01
全身疾患への応用も期待できる
神経が栄養を届けてくれるので、割れにくい・病気になりにくい歯を維持することができます。
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02
全身の健康に繋がる
神経を取って蓋をする根管治療ではなく歯髄再生治療を選択することで、二次カリエスのリスクを低減させます。
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03
二次カリエスを防ぐ
神経を残すことで歯の寿命が損なわれず、ご自分の歯でしっかりと噛むことができます。
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04
歯を長持ちさせる
採取した歯髄幹細胞は、歯髄バンクでの長期保存が可能です。現在、アルツハイマー病、脳梗塞、心筋梗塞、白血病などの治療へ応用する研究が進んでいます。
歯髄再生治療の適応基準
- 対象となる歯
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- 歯髄炎を起こし歯髄壊死が見込まれる歯
- 外傷などにより、歯髄壊死を起こした歯
- 根管治療中の歯
- 根管治療終了の歯
- 小さめの根尖病巣のある歯
- 対象とならない歯
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- 歯根破折を起こしている歯
- 歯根全体がむし歯菌の温床となっている歯 (無菌状態にできない歯)
- 根尖切除術後も根尖病巣のある歯
- ヘミセクションを行った歯
- 大きい根尖病巣のある歯
- 強い湾曲のある歯根
歯髄再生治療の流れ
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01
不用歯の抜歯
噛み合わせに関係ない親知らず、矯正治療のために抜く予定の歯、生え変わる前の乳歯などの不用歯(噛み合わせに不用な歯)を抜歯します。
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02
歯髄幹細胞の
採取・培養抜歯した不用歯から、歯髄幹細胞を採取し、約1ヵ月かけて培養して細胞を増やします。品質検査後、治療で用いるまで安全に保管されます。
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03
根管内の除菌
治療の対象となる歯の根管内を除菌し,無菌化を図ります。
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04
歯髄幹細胞の移植
治療の対象となる歯の根管内に、不用歯から採取・培養した歯髄幹細胞と遊走因子G-CSFを移植します。その後、象牙質誘導物質とMTAセメントを用いて処置を行います。
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05
血管新生因子・神経栄養因子を放出、従来の幹細胞が根管内へ遊走
移植した細胞が根管内に留まり、血管新生因子、神経栄養因子を放出します。これらの因子とG-CSFの相加作用により、歯の周囲組織から在来幹細胞が根管内へと遊走(移動)します。
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06
血管新生・神経伸長・
歯髄再生根管内に入ってきた細胞が歯髄固有の細胞に分化し、血管や神経などの歯髄組織が再生されます。
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07
被蓋象牙質形成
再生歯髄面上に骨様象牙質が形成され、その下にさらに象牙芽細胞が並び、根管内部方向へ細管象牙質が形成されます。